
商品の細かい傷を見て購入を判断するということでは思考型ですが、それが古来からの日本人の美意識からきていますから、ある意味感情型とも言えますね。商品の過剰包装も、そういう美意識から出てきていると思います。
「FCBグリット」(図3)という広告のモデルがあります。商品を思考型属性志向と感情型属性志向、商品に対する関与度の高低の2軸で分けて戦略を立てていこうという考え方です。横軸に思考型−感情型、縦軸に高関与−低関与の軸を設けて製品を4つに分けるんですね。


一般的に、高額商品でスペックなどの検討を要する車や家電は、思考型属性志向の高関与製品です。ファッションや化粧品も高関与製品ですが、デザインや色が重視される感情型属性志向の製品です。思考型製品と感情型製品では消費者行動が異なるので違った広告戦略をとれ、ということなんですね。
ただ、車でも燃費で売るときは思考型ですが、デザインや色で売るときは感情型のアプローチが必要になります。化粧品でも、例えばUVカットのスキンケア製品なら思考型アプローチが有効になります。
この思考型属性志向、感情型属性志向という考え方で世界10地域の消費者意識を比較した調査があります(図4)。アサツーディ・ケイが10年ほど前に行ったものです。この調査では台湾が極端に感情型属性志向が強いという結果になっていますが、それに次いで感情型なのが日本です。逆に、思考型属性志向が強いのはドイツ、次いでイギリスです。
ただ、面白いのは、品質に厳しいという点では、日本もドイツの消費者も共通なんです。日本の場合は、それが合理性ではなく美意識に根ざしているという違いがあるんですね。
ここで重要なことは、感情型属性志向が強い場合は、色やデザインが商品選択の大きな要因になることです。色やデザインは好みの問題ですから、非常に変化しやすい。逆に言うと、目先を変えれば消費者は注目してくれるので、企業は簡単に新しい製品を提案できる面もある。消費者も新しい製品を求め、企業も対応しやすいということで、新製品がどんどん出てくるわけですね。
これまで述べてきた日本の消費者特性は、過去いろいろな角度から研究されてきましたが、それを整理して消費者の購買行動全体から見直すということはあまりなかったと思います。企業も、経験的に製品の多様化や新製品の開発に取り組んできたと思うのですが、今まで見てきたように他の国と比較した日本の消費者特性という視点から見直せば、新たなヒントも見えてくると思います。
そこで大事なのは、やはり共時的な視点と通時的な視点の両方を見ることです。規範のなさや「清浄」に対する美意識は時代を通じて共通の価値観だと思いますが、同時に消費経験や知識が高度化し、商品に対する要求も厳しくなっている。その両方を見るということですね。
もう1つは、ニーズ対応とコンセプト提案の統合が大事だと思うんです。
ニーズ対応の成功例と言われているのが、CVSのセブンイレブンです。消費者が欲しいものを欲しいときに欲しいだけ提供することで成功したと言われています。
その対極にあるのが、コンセプト提案です。数年前に任天堂に直接聞いたのですが、ゲームを作る時に消費者調査をしないということを言っていました。ゲームの面白さは自分たちが一番知っているから、というのが理由です。ソニーのバイオの開発も、あまり消費者調査をせずに行われたと聞いています。
しかし、実際はセブンイレブンも店舗の個性を出すために総菜や弁当を含めると50%以上はオリジナル商品で構成されています。ゲームやパソコンも作る側の発想が大事だと言いながら、市場に出す前にはそのための調査やチェックをしているわけです。
企業の技術レベルが最近はどこも高くなっていますから、基本的なニーズ対応することは各社できてしまう。その上を行く製品をどう作っていくかがポイントになっているんですね。
ゲームの場合は、いくら消費者にどんなゲームがいいか聞いても売れる製品はできないと言いますね。その逆に、基礎的な製品の場合には、使い勝手などのニーズに対応することが重要になります。
ただ以前、花王のトップに聞いた話ですが、基礎的な商品でも今はニーズ対応だけでは難しくなってきているらしいのです。花王は、「エコーシステム」という電話やハガキ、メールなどで寄せられた顧客の声をデータベース化したシステムを持っていて、製品開発に生かしています。しかし、それは既存製品の改良には役立つが、それだけでは売れる新製品はできないということなんです。どういう業種でも、ニーズ対応とコンセプト提案の両面が必要だと思いますね。