日本のショッピングセンターをサスティナブルな生産流通起点に

ショッピングセンターの差別化

日本のショッピングセンターの差別化については、どのように考えていますか。

日米で成り立ちが違うにもかかわらず、何の個性もないショッピングセンターが増えているというのが、正直な感想です。今のショッピングセンターの多くがやっていることは、アメリカのコピーで、単に売れているブランドをテナントとして入れるだけというような気がします。

ショッピングセンターのデベロッパーの役割は、どんな店舗をどう配置するかという「テナントミックス」を作ることです。人気のあるナショナルブランドは必要ですが、それだけではどこも同じようなショッピングセンターになってしまいます。テナントの8割はそうしたナショナルブランドで固めるにしても、残りの2割で個性を出していくことが必要です。

例えば、JRで最初に作られた駅ナカ「エキュート大宮」では、土産のベーグルやブーランジェリーのショップを発掘したことが成功要因の1つになっています。東京駅の「グランスタ」は、かりんとうが有名ですね。ショッピングセンターのデベロッパーにとってテナントの発掘というのは、メーカーの商品開発と同じなのです。

日本のショッピングセンターがアメリカのコピーを脱却するには、どうしたらいいのでしょうか。

食品スーパーでは、地元のものを積極的に取り入れています。同じチェーンの食品スーパーでも、隣の街に行くと置いている魚が違います。九州のスーパーでは馬刺しが普通に売られていますが、それは食が地域に密着したものだからです。

ショッピングセンターも同じで、地域に合ったテナントミックスがある。徹底してローカルを提供していけば、日本のショッピングセンターはもっと楽しい場所になるなずです。ヨーロッパのショッピングセンターは、外観デザインもその街らしいものが多く、商品もそれぞれ違う。だから、日本のショッピングセンターも、日本独自の形があっていいのです。

PBはブランドなのか

最近、大手流通チェーンを中心にPB(プライベートブランド)の開発が盛んですね。

PB比率は、ヨーロッパが60%から80%、アメリカが20%から40%、日本は5%から10%です。日本のPB比率が低いのは、メーカーが強いからです。

ヨーロッパにはネスレ、ユニリーバ、アメリカにはプロクター・アンド・ギャンブルという大きなメーカーがありますが、スーパーマーケットの棚を抑えているのは実質的にはローカルブランドです。しかし、商品のラベルは、それぞれのスーパーマーケットのブランド、つまりPBになっているんですね。

ヨーロッパのPB比率が高いのは、大手流通チェーンのシェアが高いことが要因ですか。

それはありますね。なぜ日本の総合スーパーが店舗数を増やし、合併していったかと言えば、アメリカやヨーロッパのチェーン小売業のように価格決定権を持ちたかったからです。逆に言えば、価格決定権をメーカーのNB(ナショナルブランド)から奪うということです。

小川孔輔氏写真

ところで、PBはブランドなのでしょうか。

結論を先に言うと、PBはブランドではないと考えています。なぜかと言うと、消費者から見た時のブランドの条件にPBは当てはまらないからです。

商品がブランドとして成立するためには、「機能的ベネフィット」「情緒的ベネフィット」「自己表現ベネフィット」「記号的ベネフィット」「快楽的ベネフィット」を商品が持っていることが必要です。

そうするとPBは、便利だから、おいしいからこの商品を買うという「機能的ベネフィット」はきちんと消費者に提供できていますが、そのほかのベネフィットは提供できていません。ブランドにとって「機能的ベネフィット」以上に大事なのは、実は、それを使うと楽しいというような「情緒的ベネフィット」であったり、それを持っていることによって人に自慢できるという「自己表現ベネフィット」であったり、あるいはその商品を収集したくなるような「快楽的ベネフィット」であったりするわけです。

消費者から見たブランドの条件

そういう価値を商品に付加するには、どうしたらいいのですか?

まず、消費者の生活の中にその商品が入り込んで行かなくてはなりません。つまり、モノとして消費されるのではなくて、“事柄”として消費されるようにならなければならないのです。

例えば、ユニクロはすでに「機能的ベネフィット」だけで買われているわけではないと思います。「安くて、品質がいい」というのがユニクロの「機能的ベネフィット」ですが、ユニクロを着ると楽しいとか、ユニクロを選ぶことが自分の価値観の表明、「自己表現ベネフィット」になりつつあるような気がします。

そういう価値観を消費者の頭の中に作っていくためには、質の高い広告を継続的に出す必要があるし、メディアに取り上げてもらうようパブリシティにも力を入れなければなりません。ブランドのストーリーを膨らませていくために、いろいろな話題も提供し続けていく必要もあります。1つのブランドを育てるには最低10年以上はかかります。そういう努力をPBはしてきたかということです。

PBがブランドになるためには、機能的価値以上のものを持たなければいけないということですね。

ただ、そうなったらそれはPBではなく、ブランドになったということです。無印良品は1980年にPBとして発売されましたが、今は誰もPBとは言いません。最初の頃は「わけあって、安い。」というコピーで機能的価値を訴求していたのですが、今は、ユーザーにとって自分の生活の中になくてはならない商品になってきています。つまり、ライフスタイルブランドになっているということなんです。

しかも、PBを作ろうとすれば、1アイテムで最低1,000万円ぐらいの売り上げが必要です。それを少なくとも100アイテムそろえなければ商売にはなりません。だから、食品スーパーは、最初からPBはやめた方がいい。むしろ、生鮮や惣菜、産直野菜などでPBを作るべきだというのが僕の考えです。

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