「買いたくなる仕組み」の作り方

顧客創造という発想

こうした手法は、大企業にも適応可能なのでしょうか。

どんな企業の売り上げも、一人ひとりの顧客行動の積み重ねで成り立っている。そう考えれば同じです。

ゼリア新薬工業の便秘薬「ウィズワン」は、上場企業では最下位の便秘薬だったのですが、数年前、その販売促進に私も社員研修からかかわり、それまで3億円だった売り上げを4年間で15億円に伸ばしたことがあります。そのとき非常に効果的だったのが、POPや折込広告、ダイレクトメール、屋外広告といった従来からあるツールです。

その時使ったPOPの言葉が「うんちドッサリ!」です(笑)。しかしこのPOPをほかのメーカーも使えば便秘薬が売れるかというと、そうはならない。商品の特性や顧客の受け止め方を考慮し、情報全体をどうデザインするかを突き詰め、それを薬局・薬店のお客さんの買物行動プロセスにどうあてはめていくかということから生まれたPOPだからです。

さらに興味深いのは、ゼリア薬品工業の便秘薬は、他社のシェアを奪って伸びたのではなくて、便秘薬の市場そのものが、大きくなっていたことです。月1500個プリンが売れるようになった食品スーパーでも、ほかの銘柄のプリンの売り上げが上がっているんですね。言い換えると、みんながプリン好きになっていく。つまり、お客さんの「買いたい!」を追求することは、顧客創造、需要創造になるということなのです。

POSデータに頼ることの問題は、商品のグロスの売れ行きしか見えなくなることです。全体として売れていなければ、1、2店舗で売れていても、それは異常値であり、死に筋として判断されてしまう。売り手も作り手も従来のフレームをなかなか変えられない要因は、そのへんにもあります。その1、2店舗に需要創造のヒントが隠されているかもしれないのです。

この活動を20年やってきて思うのは、ほとんどの商品やお店には、出会うべき顧客がいるということです。消費者がその商品を買いたい理由を突き詰めていくことで、この不況期にも、需要は新しく創造されるのです。

小阪 裕司氏

オラクルひと・しくみ研究所 こさか ゆうじ

日本感性工学会理事。静岡大学大学院客員教授。九州大学非常勤講師。2000年「ワクワク系(感性価値)マーケティング実践会」を設立。全都道府県で幅広い業種・規模の1,500社が参加。
近著に『「買いたい!」のスイッチを押す─消費者の心と行動を読み解く』角川oneテーマ21(新書)。

『「買いたい!」のスイッチを押す─消費者の心と行動を読み解く』

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