
「高級志向」「価格志向」の二極化で説明できない日本人の消費。そこには、利便性を追求する日本人特有の消費スタイルがあった──。ブロードバンドの大衆化、リーマンショックによる経済大不況を経て、現在、日本人の消費スタイルは変わったのか。野村総合研究所上席コンサルタントの塩崎潤一氏に聞いた。
これまで日本人の消費は、高くても欲しいものを買う「高級志向」と、商品に対するこだわりがなく低価格を重視する「価格志向」の二極化で語られてきました。その一方で、ここ数年強まっている消費価値観に、「自分のライフスタイルにこだわって商品を選ぶ」という意識があります。この「価格感度」と、商品に対する「こだわり」は、ここ10年ほどの間に日本人の消費価値観の変化としてあげられます。
私たちが日本人の基本的な価値や行動、考え方を把握するために、1997年から3年ごとに実施している「NRI生活者1万人アンケート調査」の結果を見ると、「価格感度」と「こだわり」の2つの消費価値観は、必ずしも正の相関にはないこともわかりました。つまり、「こだわり」の消費価値観を持ちながら、「安いもの」を求める意識が強い人もいますし、「こだわり」がないし「高くてもよい」と思っている人もいます。そのような日本人の消費スタイルを、図のように4つの象限に分類しました。
「プレミアム消費」とは、自分のお気に入りにこだわり、プレミアム(付加価値)に対してはしっかりと対価を払うという消費スタイルです。その一方で、商品に対するこだわりがあり、価格も重視するのが「徹底探索消費」です。「徹底探索消費」の人たちは、多くの情報を集めてお気に入りのものを安い価格で購入しようとします。
「利便性消費」は、「徹底探索消費」とは対照的で、商品に対するこだわりも、価格の安さに対するこだわりもない消費スタイルです。「利便性消費」の人たちは、商品や価格を重視しない代わりに、利便性を重視します。便利に買えれば、商品にも価格にもこだわりを持ちません。「安さ納得消費」は、商品に対するこだわりはなく、価格が安いことだけで評価する消費スタイルを指します。
この中で日本人に最も多いのが「利便性消費」です。日本人の3人に1人はこの消費スタイルに属しています。年齢別に見れば、40〜50歳代に多く、日本人全体の中でも人数の多い団塊の世代に多いのも特徴です。
このように利便性を重視した消費は、日本人に独特な消費者と言えます。日本人は世界的に見ても就労時間が長いため、買い物に時間がかけられません。そのため、便利ならば何でもよいと考える人たちが多いのでしょう。また、どの店で買っても、ある程度のレベル以上のものが買えるという信頼や安心感が日本の社会にはあるので、利便性だけを重視して消費することに抵抗がないともいえます。
