今、マーケティングに何ができるか

東日本大震災は、東北地方に甚大な被害を及ぼしただけでなく、首都圏に長期的な電力不足という不測の事態をもたらした。電力需要が高まる今年の夏、さらに来冬にも、節電に対する取り組みが産業界、一般家庭に求められている。そんな中、マーケターの人材育成にも活躍する山本直人氏から「震災後の生活と新たな機会」と題するリポートが公表された。今こそマーケティングで培われた知恵を社会に還元する機会ではないだろうか。

東日本大震災でビジネスにも大きな影響が出ていますが、どう見ていますか。

福島原発は予断を許さない状況が続いていますが、それがある程度収束に向かったという前提でお話しさせていただきます。

まず、今回の震災の影響はきわめて複合的で、それが生活や経済の将来的な不透明感を増していると見ています。 その特徴は、大きく3つあって、1つ目は被害の大きさです。1995年1月に発生した「阪神・淡路大震災」を大きく上回っています。 2つ目は福島第一原子力発電所の事故、3つ目は計画停電で当初は首都圏も大混乱しましたが、その停電問題が年単位で課題になることが見えてきていることです。そういう中でマーケティングの役割も変わってくるだろうし、世の中を少しでも良い方向に変えていくために、マーケターも知恵を絞っていくべきだと思うのです。

マーケティングの3つの変化

今後のマーケティングは、どういう方向に変わっていくか、あるいは変えていくべきだと思いますか。

3つの点で変わると思います。これまでのマーケティングは需要拡大のために知恵を絞ってきたのですが、首都圏に関して言えば、当面は需要が拡大され過ぎてしまうと、供給が追いつかなくなることも予想されていますし、今後は、生活時間や資源の調整のために知恵を絞ることになると思います。

例えば、店舗も今は早い時間に閉めていますが、そういう状況が続くようだと、ますます無店舗販売にシフトしていくかもしれないですし、コンビニなどの長時間の営業も見直されるかもしれません。それから仕事の面でも、本格的に時差通勤、在宅勤務、さらにはサマータイムの導入も考えられます。電力供給次第で、工場も止まる、需要も制限される。その中でどう利益を上げてくかにマーケティングの視点が移る。今までのマーケティングの前提が崩れるというのが1つ目です。

2つ目はマーケターに社会的な視点がますます求められてくることです。今までは、環境問題の観点から「CO2を減少しましょう」という形での省エネルギーだったのですが、もっと切羽詰った形になってきます。

例えば、電力不足を補うために新しい型のエアコンやLED電球に換えていくことをどう推進していくかが課題になってきます。これまでは電気の需要を拡大しようということで、商業施設だけでなく、小さなマンションでもライトアップをしたりということが行われてきましたが、今後は、そういうことにも見直しが行われると思います。

また、原発事故の解決や補償の問題、あるいはエネルギー政策の見直しにしても、長期的な課題になります。マーケティングにも、新しい生活のスタイルや方法を提案していくという社会的な視点が求められると思います。

山本直人

メディアの使い方も変わってくるのでしょうか。

3つ目は、それと関連するのですが、エリアごとのマーケティングを今後は考えていかなければいけなくなると考えています。

実は、今回の震災で日本の中部以西は直接的被害を受けていません。電力不足の問題もないし、経済活動にも支障はありません。そうすると、今後はエリアによって、マーケティングが変わってくる可能性があります。それに伴って、エリアごとにきめ細かく情報を提供することも重要になってきます。

新聞やテレビはこれまで全国紙、全国放送という点が広告メディアとして大きな価値を持っていましたが、今後は同じ新聞でも、首都圏、関西圏、中部圏などのエリアごとに役割が変わってくると思います。

通常の自然災害の場合は、被害は一部のエリアに限定され、復興も比較的迅速に行われますが、今回の場合は、被害が広域、かつ複合的で、復興が長期化することは間違いありません。しかし、電力不足の問題も、実は首都圏に限った話であって、同じようなマーケティングを中部以西でやっていいのかということです。首都圏を中心にマーケティングを考えていくと、中部圏や関西圏でも消費が萎縮してしまう恐れがある。エリアごとのきめ細かいマーケティングが必要になると思います。

3つのマーケティングの変化

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