
震災が緊急支援から復興支援の段階に移り、継続的な支援が求められる中、商品やサービスの収益の一部を寄付するコーズ・リレイテッド・マーケティングが注目されている。この寄付につながる商品・キャンペーンを「寄付つき商品(コーズブランド)」と呼ぶことを提唱するのが、「1億人のバレンタインプロジェクト」をプロデュースした野村尚克氏だ。プロモーションの行き詰まりを打開し、コーポレートブランドを作る「寄付つき商品」の考え方とは?

略してCRM、コーズ・マーケティングと言う場合もあります。定義はいろいろありますが、私自身は「収益の一部がNPOなどへの寄付を通じて、社会的課題の解決のために役立てられるマーケティング活動」という言い方をしています。図に書くと、マーケティング活動と社会的課題の解決活動の合わさった部分、ここがコーズ・リレイテッド・マーケティングの領域です(図1)。企業の社会貢献のテーマ、企業が取り組むべき社会的課題には環境、医療、子ども、貧困など様々なものがあります。そうした社会的課題を寄付つき商品、私たちはそれをコーズブランドと呼んでいるのですが、その収益の一部を当てることで解決していこうというのが、コーズ・リレイテッド・マーケティングの考え方です。
「コーズ(cause)」は、一般的には「原因・理由」という意味ですが、コーズ・リレイテッド・マーケティングでは「課題」を解決するという意味で使われています。
日本ではこの5年くらいですね。ボルヴィックが2007年から「1L for 10L(ワンリッター フォー テンリッター)」プログラムを実施したことがきっかけの一つです。ユニセフと協働してアフリカのマリ共和国に井戸を掘るなどの活動を行っているのですが、ボルヴィック購入1Lごとに水10Lが供給されるという、とても素晴らしいプログラムです。
コーズ・リレイテッド・マーケティングが生まれたのはアメリカです。1983年にアメリカン・エキスプレス社が、自由の女神を修復するために同社のカードへ新規入会すると1ドルを、利用するごとにつき1セントを寄付するキャンペーンを行ったのが始まりです。このキャンペーンによって同社は新規入会者を45%、カード利用額を28%増加させ、3か月間で総額170万ドルの寄付を集めました。これが一つのきっかけとなり、その後アメリカで多くのコーズキャンペーンが立ち上がりました。日本で注目され始めたのは、それから20年以上たってからということなんです。
「コーズ」は成熟された社会で支持されるマーケティング手法だからだと思います。生活が豊かになると「モノよりコト」が重視されるようになり、人や社会に対して配慮する「利他的行動」が増えてくる。「公共」という考えも一般化し、ボランティア活動も当たり前になる。最近、寄付やチャリティに参加する人が増えてきているのも、そうしたことが背景にあると思います。
社会的課題の解決を行うことと、もう一つはNPOとも連携することです。コーズ・リレイテッド・マーケティングには、「消費者」「企業」「NPO」の3者のステークホルダーがいます。
今回の震災でも活躍しましたが、最近は4万を超えるNPO法人が日本にはあります。NPO法(特定非営利活動促進法)ができたのは1998年ですが、それから急激に増えています。規模もパパママストア的なものから1つの国家と同じくらいのものまである。例えば、貧困地域や紛争地域で医療支援を行っている「国境なき医師団」はノーベル平和賞を受賞していますし、ロシアのチェチェン侵攻については名指しで非難声明を出しています。このようにNPOは非常に独立したものなんですね。あとで詳しく説明しますが、NPOとどう接するかもコーズ・リレイテッド・マーケティングでは重要になります。
別な言い方をすると、この3者は、それぞれコーズ・リレイテッド・マーケティングにかかわる目的・捉え方が異なるということです。

企業にとっては、CSRの一環として社会的責任を果たすことや、また、寄付つき商品を売ることでマーケティングの一環としてかかわったりする。NPOにとっては、寄付金を集める場であったり、自分たちの活動を知ってもらう場として考える。それから、消費者にとっては、気軽にできる社会貢献であり、商品選択の一つの基準、コンセプトになるということです。
コーズ・リレイテッド・マーケティングは、製品やサービスを提供する企業、寄付を受けて社会的課題を解決するNPO、購入する消費者の3者がメリットを享受できる仕組みなんですね(図2)。
東日本大震災以降に私たちコーズブランド・ラボで行った調査があります。まず「社会貢献活動に関心がある」という質問に95.0%の人が「ある」と答えています(図3)。次に、「あなたが行っている社会貢献活動は何ですか」という質問に対して、寄付つき商品の購入が2番目に来ています(図4)。この調査ではクリック募金が1位になっていますが、これはこの調査をクリック募金サイトで行った影響もあると思います。また、「あなたは社会貢献活動につながる商品を買ったことがありますか」という質問には、76.6%が「ある」と答えています(図5/2011年)。
購入理由を聞くと、「似た商品を買うなら社会貢献につながる方が良いと思ったから」が72.3%と最も多くなっています(図6)。寄付つき商品は価格を下げずに売れるという点を強調しておきたいと思います。
それから、2009年に慶應大学とNTTレゾナントが行った調査があるのですが、この時は寄付つき商品の購入経験者は45.5%でした(図5/2009年)。
同じ調査で、具体的にどんな寄付つき商品を買っているかも聞いていますが、多いのは食品・飲料、日用品です(図7)。



価格訴求以外のプロモーションが流通でも求められていることがあります。寄付つき商品で買われているのは食品・飲料、日用品が多いと言いましたが、コモディティ化した(差別化ポイントのなくなった)商品は、価格プロモーション一辺倒になってしまいがちです。それに代わるプロモーションとして流通から支持されているんですね。
先ほどの慶應大学とNTTレゾナントの調査に戻りますが、この調査では、寄付つき商品を買ったことがない人が54.5%いました(図5/2009年)。この人たちに寄付つき商品の購入意向を聞くと、そのうち74.1%は「買いたい」と答えています(図8)。購入経験者と未購入だけど購入意向がある人を合わせると、86%くらいの人が寄付つき商品の購入を期待できる層ということになります(図8説明参照)。
また、寄付つき商品の非購入者で購入意向のある人たちの買いたい商品を見ても、食品・飲料、日用品です(図9)。ただし、図7と図9を比較して欲しいのですが、購入経験者では衣料品を買った人たちが25%しかいないのですが、非購入者では衣料品だったら買いたいという人が倍近くいる。衣料品も寄付つき商品に向いていると思います。
