
伊勢丹新宿本店の地下一階。まるでファッション・ブティクのような人気デパ地下の中に、宝飾店を思わせるおしゃれなブースがある。並べられているのはカラフルな飴。そのラインナップが実にユニークだ。「天使のおしゃべり」は、瓶入りのみつあめ。「羽一衣」は、軽く口どけのいい板あめ。「虹ノムコウ」は、色鮮やかな棒あめ……。
「食感もテーマの一つなんです。とろっとしたあめ、パリパリしたあめ、カリッとしたあめ。舐めるだけじゃなくて、飲んだり食べたりする楽しいあめを提供したくて」と説明するのは、榮太樓總本鋪の大場美貴課長。中でも面白いのが、「スィートリップ」だ。みつあめをグロスリップ状にパッケージしたもので、本物の化粧品と見間違えるくらいかわいらしい。商品化のきっかけは、ドラッグストアでジェルグロスを見たこと。
「瞬間的にこれだ!って(笑)。昔、芸妓さんや舞妓さんは唇にあめを塗って艶を出していたそうですから、きっとうけると確信しました(笑)」
みつあめの原材料は他のあめと同じ有平糖。あめに加工する段階で液状にするそうだが、その製法には独特の工夫があるという。有平糖は砂糖が主原料のため結晶化しやすい特性を持っているからだ。フレーバーの原料にもこだわりがある。例えば「ダマスクローズ」は、ブルガリア産のバラのつぼみを使い、煮出して抽出している。パッケージはかわいいけれど、中身は老舗和菓店の伝統を受け継ぐ“本物”なのだ。それが人気を集める理由の一つだろう。
「老舗はただ伝統を守るだけでなく、新しいことも好きなんですよ。だから今まで残ってこれたのです」。そういえば、榮太樓の代名詞でもある「梅ぼ志飴」は、江戸っ子の洒落で甘いあめに酸っぱい梅干しの名を付けたという。「スィートリップ」にも、そんな榮太樓の遊び心が息づいている。
「初めて見たら驚くでしょう、『何、コレ?』って。そこから話が盛り上がってくれればいいと思っています。お菓子はコミュニケーションツール。だから、自分の好きなように楽しんでくれれば嬉しいですね」
3月上旬、伊勢丹のショップにはホワイトデーの贈り物を求める男性客の列ができていた。榮太樓のあめからどんな素敵なストーリーが生まれているだろうか。


●Ameya Eitaro あめやえいたろう
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